Maker Faire 2018 出展報告(その2)
Maker Faire 2018の展示報告の後編です。
クレーン操作の様子
今年も 多くの方々にクレーン操作を体験していただきました。中には、実際のクレーン現場で働いていらっしゃる方もいらっしゃいました。(毎年、実際にクレーン関係の仕事をされている方が一人はいらっしゃるというのはおもしろいことです。)
今年も感じたことは、小学校入学以前のような小さいお子さんには、やはり難しすぎるという点です。ジョイスティックを動かす方向とクレーンの動き方の対応付けが難しく、大人でも慣れにくい方には難しい作業となります。しかし見ていて感じたのは、小学校以降程度のお子さんであれば大人とそれほど変わらず、むしろ慣れが早いか遅いかの個性の方が支配的であるようです。
以下が操作卓の画面のキャプチャです。画面左側が運転席からの視点となっていて、右側はクレーン頂上から真下を見下ろした視点となっています。これを見ただけではなかなか物体の位置が把握しづらい場合があるため、隣についた係りの者が実際に物体を見ながら操作のアドバイスしていきます。
最後に
今年も多くの方に来ていただきました。去年の展示を覚えてくださっていた方も何人も来ていただき、毎回コメントいただけるのは大変励みになります。
私たちのブースだけではなく、Maker Faireの会場全体がそうなのですが、2日間ほぼ客足が絶えることなく、本当に多くの方に見ていただくことができました。ありがとうございました。
今回の展示は、4月くらいから方針を大転換したこともあり、クレーン側も電装系側も、完全な完成形での展示をできなかったことが残念です。来年はより一層完成度を高め、完全なブームブースター機とグラップル、操作卓を展示できるように頑張ってまいります!
Maker Faire 2018 出展報告(その1)
2018年8月4日~5日に開催されたMaker Faire Tokyo 2018に出展してきましたので、そのご報告です。
全景
去年に引き続きクレーン模型の展示です。今年はブームブースター機を展示する予定でしたが、間に合わずに別機体に変更しました。展示物の高さでは、会場の周辺で一番高かったです。 アーム部分は真鍮の材料の色そのままだと背景と溶け込んでしまいますが、今年は赤と白で塗装済みのものにしましたので目立ちやすかったです。
今年はクレーンが巨大なので、場所は机2つ分確保しました。端にある操作卓から操作できるようになっています。
準備
以下は当日9時半頃の様子です。今回はメンバー2名が徹夜してしまいました。徹夜明けでかなりつらそうな様子です。
クレーン
今回のクレーン模型のクローズアップです。
模型作成者は、個人的にこの角度からの眺めが一番好きだそうです。本体部分は作りかけのブームブースター機となっています。
周囲にある基盤のようなものは、切り出した真鍮の材料を半田付けする際に固定しておくための冶具です。
後ろに積んでいる重りも作成しています。
モータードライバ
今回は、モータードライバのシステムを全面的に更新しました。この小さなサイズに8チャネルのモータードライバが組み込まれています。また、ロータリーエンコーダを繋ぐことができ、モーターのフィードバック制御が可能となりました。つまり、PWM値を直接指令するだけではなく、速度の値を指定する制御ができるようになりました。
モーターは巻き上げ機のドラム内部に組み込まれているので表面からは見えません。この構造はまた別の機会に詳細を紹介します。
操作卓
今回は、操作卓も全面的に更新しました。
まるで既製品のような立派な出来栄えですが、これらは全て今年から参加した新メンバーによる手作りです。操作性をとことん追求して設計されました。端部の滑らかな曲げ加工に注目です。プッシュボタンやスイッチ類は、後述するグラップルの電磁石のON/OFFや、プレイヤー名の登録やスタートストップなどです。ジョイスティックの先端にあるボタンはグラップルの回転方向の姿勢制御を、中央の7セグLEDはその強さを指定するようになっています。
手前に立っているタワーのようなものには、赤外線LEDが多数接続されています。これは、後述するグラップルに指令を送るために用いられます。無線通信は、過去に無線LANを使って会場で苦労した経験があったので、今回は赤外線通信を利用しました。
グラップル
今回から新たに導入されたのが、このグラップルです。オブジェクトを電磁石で吸着して吊り上げるための装置です。この装置は実物の大きさや構造に全く似せてはおらず、吸着と姿勢制御の機能を実現するためだけの構造です。そもそも実際のクレーンでは、電磁石による吸着ではなくてフックをかけたり、掴んだりします。
以下が拡大写真です。一番上段がマイコン&モータードライバ基盤、2段目は電源と赤外線の受信モジュールが各方向に取り付けられています。その下に取り付けられているマブチ340モーターは、方向を姿勢制御させるためのリアクションホイールを構成しています。リアクションホイールは、モーターで重りを回転させているだけのものですが、その反動力で装置全体の向きをコントロールできます。重りは「タミヤ 楽しい工作シリーズ No.217 はずみ車動力車工作セット 70217」のものを加工して利用しました。実際にもクレーンの現場にて、このような姿勢制御の仕組みはあるらしいですが、その場合にはリアクションホイールではなくてコントロールモーメントジャイロが用いられているようです。電池の下側にはスチール缶の吸着用の電磁石が取り付けられています。
後半は(その2)に続きます。
Maker Faire 2017 出展報告
2017年8月5,6日に東京ビッグサイトで開かれた、Maker Faire 2017での展示の様子を報告いたします。
展示物の紹介
今回の展示の全景はこちらです。タイトルは、「クレーン運転士免許を取ろう!~これが本当のクレーンゲーム~」となっており、精密な模型のクレーンを操縦して、クレーン運転免許を模擬したゲームを体験してもらうというものです。
そのために準備したのは、上の写真にあります模擬コースです。単に光る棒が立っているだけに見えますが、その裏を見ると・・・
このように配線がびっしりです。実は、プラスチックの棒の1本1本が接触センサーとなっていまして、クレーン模型で運ぶ荷物が揺れて棒に振れてしまうと、照明が消え、隣のパソコンにヒットカウントが伝送される仕組みになっています。これを実現するために、1本1本にフィリップフロップ回路が取り付けられており、出力がGPIOに繋がっています。
実はこの仕組み、会場にて開場直前に結合試験となってしまったのですが、一部の接触センサや接続がうまくいかず、正確な点数カウントはできませんでした。完全動作版は次回への課題となります。でもこれ、担当者一人が直前の1週間ちょいで急ごしらえしたものなんです。配線の1本1本から力強さが感じられますね!(笑
システムの全景はこちらです。
クレーンゲームのためにもう1つ準備したハードウェアは、前回のブログでも紹介しました、疑似操作卓(画面手前のジョイスティック)です。1個2万円の工業用ジョイスティックを2個用いまして、LED付きプッシュスイッチやキー付きスイッチなども用い、それっぽい雰囲気のある高級感のある仕上がりとなっております。製品として売っていそうな仕上がりです。
画面に表示されているアプリケーションも、コース上での障害物のヒット位置を表示したり、プレイヤー登録やタイムランキング表示をしたりして、ゲーム性を持たせました。
クレーン模型の全景はこちらです。この模型自体は、去年のMaker Faire 2016で出展したものとほぼ同一のものを用いました。精密な模型は今年も多くの方に見ていただき、制作方法などの質問を大変多くいただきました。
先端についているLED(航空障害灯)は、かなり遠くからでも確認でき会場内にて遠くからでもブースの位置がよくわかりました。
モータードライバ基盤やカメラなどの電装系は、過去のブログで紹介しました、Raspberry Pi Zeroを用いたものを使っています。運転席部分は模型として再現されていませんが、基盤は運転席のサイズ内に全て収まっています。
入場者の方々の反応
全体的に、去年に引き続き多くの好評をいただきました。ありがとうございました。去年の展示のことを覚えていてくださった方も何人かおり、ゲームとして体験してもらえる方向への発展についても好評をいただきました。
今回は、クレーンゲームということもあり、お子さんのプレーヤーが大変多かったです。しかしながら、全体的に今回のクレーンゲームは、小学校入学以前のお子さんには操作が難しかった印象が感じられました。お子さんたちはやりたがってくれましたが、思ったよりも難しく、結局親御さんが操作しているといった感じが多かったです。
今回のクレーン模型の操作は実物と同じく、3つのレバーで直接3つのモーターを操作するものなのですが、これは極座標における操作となってしまい、直感的な操作ではありません。次回は、より簡易的な、直交座標による直感的な操作をアシストするモードを設けても良いのではないかと思いました。
こちらは、操作中にケーブルが外れてしまったのを修理している様子です。次回は回転リミッターなどをつけて、間違った操作でケーブルが外れてしまうことは起きないように改善していきたいと思います。
ところで、今回の来場者の方々の中に、数名ほど、実際にクレーン運転免許を持っている方がいらっしゃいました。世間は狭いものです。また、なんと、実際にクレーンの運転の仕事をなさっている方もいらっしゃいまして、本ゲームをやっていただきました。丁寧な感じで操縦されていまして、時間は7位くらいに入っていたと思います。
さて、ランキングの方は最終的にどのようになったのかといいますと。。以下は2日目の閉会場する直前の画面のキャプチャですが・・
画面をよく見ると、JyuukiとかHeavyとかいう人で上位ランキングが独占されています。実はこれ、同一人物で、製作者(メカ担当者)本人です。よく見ると、製作者がプレーしているシーンがちらほら写真に写っています。
この写真なんて、自分でやってないでお客さんにやらせろよ!(笑)って思えますが、プレーの見本を見せているんです。(笑)繰り返し見本を見せていると、どんどん上手くなっていきます。(でも、この記事の執筆者本人は一度もランクインできない下手くそでしたが・・笑)
実は出展者側としても、作ったクレーンゲームを使うことをできるのはこの場限りなんです。こんなものを組み立てて置いておけるほど広い部屋はありませんし、そもそも部品は各自で分けて保管しています。
さて、ゲームとしては、2日間で(ゴールまでやり遂げて)記録が残っているだけでも、110人を超える方々にプレーしていただき、大変多くの方々に見ていただきました。ありがとうございました。
今後の展開
今後の展開について、まだはっきりと決まっておりませんが、記事の執筆者の勝手な想像では以下のようなものが挙げられます。
- クレーン模型の変更、大型化、ブームブースター
- コースの障害物センサーの改良(静電容量センサetc)
- ロータリーエンコーダによるフィードバックをつけ、サーボ機能を持たせて操作性と安全性の向上
- 子供向けのゲームコンテンツ(トレーラーへの積み荷、車庫入れ、工事現場シミュレーションetc)
今後の展開にご期待ください!
MakerFaire2017へ向け結合試験中(その2)
Maker Fair 2017まで残り1週間を切りました。本日は、メカ担当者が私のところへ直接来て、最終結合試験とコネクタなどのすり合わせを行いました。渋滞に巻き込まれて片道4時間以上かけて来てくれました。作るものがまだいっぱい残っているのに交通で時間消費してしまいました。
この光る棒は・・・なんなのでしょう?
裏を見ると、何やら74シリーズのロジックICがびっしりですが。。
必死にデバッグしております。
私の方は、買ってきたGPIOユニットが動かずに大忙しです。単なるGPIOなので、時間があればマイコン買ってきて作るんですが、今回時間があまりにもなかったので、時間をお金で買うということで既製品を買いました。しかし、使い方が分からない!なんでも最初に買うデバイスは使えるまでに時間がかかるものです。。
では皆様、当日会場にてお会いしましょう!
MakerFaire2017へ向け結合試験中
Maker Faire 2017まで残り2週間となりました。今回の私たちの展示物の一部を簡単に紹介したいと思います。
今回の目玉の1つはこれ、疑似操作卓です。1個2万円以上する工業用ジョイスティックを用いて、操作卓を専用に作成しました。会場で是非操作感を体感してみてください!
昨日に担当者より操作卓ハードウェアを受け取りまして、本日ようやく、最初の結合試験が成功しました。
滑らかに動いてなかなか良い操作感じです。さすが1個2万円!
今回の目玉のもう一つは、障害物コースの導入です。これによってクレーン操作にゲーム性を取り入れます。しかしながら、センサー付きの障害物コースと表示アプリは、それぞれ別の担当者がまだ作成中であり、まだまだ完成には時間がかかります。これからが正念場です。本当の意味での結合試験は、MakerFaireの開場数時間前になりそうです。(笑)
Maker Faire Tokyo 2017 企画紹介
クレーン運転士免許を取ろう!-これが本当のクレーンゲーム-
(内容)
クレーン運転士免許の実技試験の合格率は約50%。もっと練習したい貴方に朗報です。クレーン運転士免許の実技試験を体感出来る設備をご用意しました。1/50のジブクレーン模型をRasberry Piで遠隔操作します。
巷に溢れるクレーンゲームは一線を画す体験を貴方に!
(図の説明)
去年はクレーンのみの展示でしたが、今年はゲーム性を取り入れ、実技試験環境を構築しました。参加者に操作を体験して遊んでもらえます。
高さなどのサイズは以下の通りです。
去年のMaker Faire Tokyo 2016のレポート記事
今年新規作成したRaspberry PI Zeroによる小型コントローラと操作ジョイスティック
Intel Edisonを使ったIMU(慣性計測装置)の作成
はじめに
クレーン模型の揺れ止め制御のため、IMUモジュールを作成しました。クレーンで吊られている貨物の中に入れて、揺れを止めるように自動制御させるために利用します。最初はマーカーを複数のUSBカメラで撮影して画像認識によって貨物の揺れを検出しようとしましたが、画像認識アルゴを作る手間とロバスト性、特に遅延の問題が懸念されたため断念し、代わりにMEMSジャイロを用いることにしました。
MEMSジャイロを用いる際に必要となった制限事項は、吊られている貨物に載せるわけですから、(1)無線通信かつ電源はバッテリー(2)通信量を減らすため、加速度から位置を算出する積分またはカルマンフィルター的な信号処理は、吊られているCPUモジュール内で行う、ということが必要となります。作るのは面倒になるかと思いきや、調べてみるとIntel EdisonにSparkFun Electronicsで販売されているモジュールを繋げるだけで、簡単にできてしまうことが分かりました。信号処理も自分で作るとけっこう面倒だなと思っていましたが、RTIMULibというライブラリをインストールするだけで簡単にできてしまうようです。ドローンやロボット関連で必要なのだと思いますが、慣性計測関連は機器・ソフトウェア共に充実していて助かります。
購入したもの
- Intel Edison
- SparkFun Block for Intel® Edison - 9 Degrees of Freedom
- SparkFun Block for Intel® Edison - Battery
- スチロールケース SK-2
- M2 黄銅スペーサー メネジオネジ 3mm <pps-537>
SparkFun社のものは、日本からはスイッチサイエンス社から購入できます。
組み立て
組み立ては非常に簡単です。Edisonと9DoFモジュールとバッテリーモジュールを順に繋げるだけです。ただ、コネクタで繋げただけだと衝撃で外れそうですから、ネジで固定します。Edisonと9DoFモジュール間は、Edison BreakoutBoard Kitに付属してきたネジを使って固定しました。9DoFモジュールとバッテリーとケース間は、M2の3mmスペーサーを利用します。(このネジはSparkFunでも売っていますが、Amazonで上記リンクのものを買ったほうが安いのでお勧めです)
ケースは秋月電子で売っている小さいものに穴を開けて利用します。ただし、バッテリーをケースに入れるとフタが閉まらなかったので、バッテリーだけ外に出しました。バッテリーは交換可能なようにコネクタをつけておきます。
使ってみて分かったのですが、このバッテリーモジュールは、USBからの電源供給時においてもバッテリーを繋いでおかないと Edisonに電源が供給されないようです。つまり、USBから給電するつもりでもバッテリーは常に取り付けておかなければ動作しません。
ソフトウェア
以下のサイトに書かれている通りにして、RTIMULibをインストールします。
つぎに、キャリブレーションを行います。
※今年以内にキャリブレーションの詳細を書く予定
現在、この程度のIMUの精度では滑車の揺れ止め制御はできないのではないか、という疑問が湧いてきているため、使えるかどうか検討中です
更新履歴
2016/10/18 初版